7.1~8.31鈴木諒一写真展 「観光/郵便機」
- 2013.07.01 Monday
- 09:22
*作品解説
観光
書物には、人の手によってそれがかたちづくられている故のおおくの必然が隠されている。
特に図鑑のよう な形態には、これまで人間が発見し、活用してきたメディアとしての書物のアーカイバルな特性や「現実」へ の実践的な介入欲求が顕著に見え隠れしている。
真に人間的な独断、歴史の独断によって決定された言葉の順 列によってそれは並び、場所や動物もその名前の類似や、気候や国や成り立ちといった類似によって、再配置 と再認識を決定づけられる。
しかし、あくまでもそれは、書物にたいして正当な角度から接近したさいに用意されるひとつの世界に他ならない。
その接近は、同時に存在する「別」の書物を隠し、別の繋がりのあり方の発見と証明を妨げることは あっても、それを失わせることは出来ないのだ。
誰が言ったか、世界で一番遠くにあるページはそのページ自身の裏側であるという。
そう考えることもまた きっと、不可能ではないはずだ。
「近かったすべてのものは、遠ざかる。」
夕暮れを思い書き記したゲーテの詩のごとく、そこにはある種の「距離」の識別の欠如と発生がある。
私は 幻想について語ろうとしている訳ではない。
人間の積み重ねてきたひとつの認識の仕組みに立脚しながら、そこから逃れ出ててしまった偶然の暗号とでもいうべき世界の現出がたったひとつのページ、つまりははからずも製本された 1 枚の紙には宿っているにちがいない。
太陽の光によって表裏をひとつにしたイメージたちは、一体となった内側に潜在したものを再表象することによってそれを証明するだろう。
郵便機1
飛行機で旅立ち、ついぞ戻らなかった者たちは、ときにとても幻想的に語り継がれる。
その中の一人であるあの有名な小説家の「居場所」をもとめて、僕は「飛行」を志向するまなざしと墓荒らしの手つきで、その航路を開いていった。
彼の航路、彼の小説の航路、それら複数の航路において、飛行と上昇の運動を再演し、紡いでいく中で、「物語」 は源泉であるその他多くの「彼ら」へも繋がっていく。
そしてそれは僕の「物語」でもある。
フランスの小説家にして、飛行士であったサンテグジュペリが、実際に郵便機乗りとして飛んだ航路(トゥールーズ〜ダカール間(1925年)、リオデジャネイロ〜サンティアゴ間(1929年))と小説中の飛行士の航路(『夜間飛行』のファビアンの有名な雲の場面)を、本という閉じられた空間の中に見いだし、彼の「物語」を再演する作品。
鈴木はこの作品により、Emon Portfolio Review 第一回グランプリを受賞した。
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鈴木諒一 プロフィール
1988年 静岡市生まれ
2011年 多摩美術大学芸術学科卒業
2013年 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了
*グループ展
2009年
『TAMA VIVANT鵺 2009 』 多摩美術大学(東京)
みなとみらい(横浜)
2011年
『Artexpo New York 2011 』 Pier94 ( NY )
『もうひとつのトビラ2011 尾久発01 』 北井画廊(東京)
『Atlas2011 』 東京藝術大学取手校地(茨城)
2012年
『EMON Portfolio Review 第1回グランプリ受賞展「郵便機」』
エモン・フォトギャラリー(東京)
『Guimarães noc noc 2 』
ギマランイス(ポルトガル)
2013年
『第61回東京藝術大学卒業・修了作品展』
東京藝術大学上野校地(東京)
*個展
2013年
『観光』 エモン・フォトギャラリー(東京)
『リバー・フィールド』artdish(東京)
*受賞
第5回東野芳明記念・芸術学科優秀卒業論文賞
第1回 EMON PORTFOLIO REVIEW グランプリ
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鈴木諒一写真展 「観光/郵便機」
7/1(月)〜8/31(土)
協力:EMON PHOTO GALLERY
Coolie’s Creek
東京都港区白金1−2−6
TEL:03-6459-3313